独立開業コラム
- 2023.02.20 インボイス制度を図解で紹介|美容師の収入はどうなる?【お金の流れがよくわかる】
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2023年10月からスタートすることが決まっているインボイス制度。
しかし2023年2月現在でも、いまださまざまな噂が飛び交っているのが現状です。
「年間売上1,000万円以下の個人事業主には関係ないんでしょ?」
「インボイスの登録をしないと仕事がなくなるの?」
「そもそも税金のことなんて全然わからない……」
インボイス制度は、美容室業界でもそれぞれの立場によって影響が大きく出る場合もあるのです。
今回は、インボイス制度がスタートすることによって、これまでと収入が変わるケースを紹介します。
インボイス制度導入で収入はいつからどう変わる?
インボイス制度は、2023年10月から導入されます。
これにより、自分や自社の収入はどのように変わるのでしょうか。
収入に関係がある人とない人がいます。
今回は、収入が変わる可能性のある人を確認しておきましょう。
インボイス方式導入で収入が変わる可能性のある人
インボイス制度がスタートすることで、収入が変わる可能性のある人は以下のとおりです。
- ✅業務委託サロンの経営者
- ✅業務委託サロンで働いている個人事業主の美容師
それぞれの立場におけるお金の流れを見ていきましょう。
【インボイス制度以前】業務委託サロンで働く美容師のお金の流れを図解で確認
まずはインボイス制度が始まる前の、つまり現在のお金の流れを確認しておきます。
業務委託サロンの経営者と、そこで業務委託として働く美容師のお金の流れです。
業務委託サロンは、ひとりのお客様から施術代を11,000円(図①)受け取ります。
このときに預かった消費税は1,000円です。
↓
業務委託で働く美容師の還元率が40%だとすると、美容師へ支払われる報酬は4,400円(図②)。
このうち400円は消費税分となります。
↓
当初サロン経営者がお客様から預かった消費税1,000円のうち、400円は仕入税額控除が適用されているのです。
そのためサロン経営者は、1,000円-400円=600円(図③)を税務署へ納めています。
↓
なお、業務委託で働くこの美容師は年間売上が1,000万円以下の免税事業者とします。
そのため消費税の納税は免除されています。
報酬4,400円のうち400円は、本来なら消費税分として税務署へ納めるべきものですが、これまではその400円(図➃)は納税が免除されていたのです。
つまり美容師さんの収入は4,400円となります。
※仕入れ税額控除とは(2023年10月以降はどうなる?)
仕入れ税額控除とは、仕入れ税額を売上税額から差し引くことです。
今回の場合、お客様から預かった消費税は1,000円(図①)ですが、400円(図②)は美容師さんへ支払うためサロン経営者は差額の600円を税務署へ納税することになりますが、
2023年10月にインボイス制度が導入されると、適格請求書(=インボイス)がないと、サロン経営者はこの仕入れ税額控除が受けられなくなってしまうので、お客様から預かった消費税1,000円(図③)はそのまま税務署へ納税しなければなりません。
関連記事:インボイス制度をわかりやすくご紹介|2023年導入の目的や基礎知識
【2023年10月インボイス制度導入後】お金の流れをわかりやすくご紹介
2023年10月にインボイス制度がスタートすると、これまでのお金の流れが変わる場合もあります。
これが全員変わるのであれば話は簡単なのですが、人によって、また働き方によって変わる場合と変わらない場合のあるところがやっかいなところです。
基本的に、正社員やアルバイトとして雇用契約を結んで働いている人にとっては変わることがありません。
収入が変わってしまう可能性があるのは、業務委託サロンの経営者と、業務委託契約で働いている美容師さんです。
業務委託で働く美容師さんがインボイス登録事業者になるのかならないのかで収入に変化が出てくる場合がありますので、そのあたりをくわしく説明していきます。
業務委託で働く美容師が今後も免税事業者でいく場合
業務委託で働く美容師さんの年間の売上が1,000万円に満たない場合、今後も免税事業者として働くことが可能です。
その場合に、これまでと収入が変わるのかどうかを確認しましょう。
お客様からいただく美容室の施術料は11,000円(図①)とこれまでと同じです。
そのうち消費税が1,000円であることも変わりはありません。
サロン経営者は適格請求書がないと仕入れ税額控除が受けられない
美容師さんが免税事業者であるということは、適格請求書(=インボイス)を発行できませんので、サロン経営者は仕入れ税額控除が受けられません。
そのため仕入れ税額控除は0円(以前は400円だった)となり、サロン経営者はお客様から預かった消費税1,000円(図③)を税務署へ全額納めなければならなくなります。
そのためサロン経営者から「免税事業者のままだと今後は業務委託報酬に消費税分は支払わない」と言われた場合
美容師さんへの報酬は、これまでと同じ4,000円で(図②)すが、消費税分400円は払ってもらえないので消費税分が0円(図②)となります。
免税事業者を選択した美容師の場合
美容師さんは免税事業者のため、これまでどおり消費税を税務署へ納める必要はありません(図➃)が、これまでは業務委託サロンのオーナーからもらえていた消費税分400円がもらえなくなります。
つまり、免税事業者を選択した美容師さんの報酬は、4,000円となってしまうのです(以前は4,400円だった)。
そのため、結果的には報酬が減る形になります。
業務委託で働く美容師がインボイス登録事業者となった場合
次に、業務委託サロンで働く美容師さんがインボイス制度スタート後に、インボイス登録事業者となった場合のお金の流れを紹介します。
なおこの美容師さんは、年間の売上が1,000万円には届きませんが、インボイスへの登録をおこない課税事業者となったケースです。
業務委託サロンで働く美容師さんがインボイス登録事業者となった場合、お金の流れは次のようになります。
サロン経営者は仕入れ税額控除が受けられる
お客様から施術料金11,000円(図①)を業務委託サロンが受け取ります。
このうち1,000円は消費税です。
美容師さんがインボイス登録事業者のため適格請求書が発行され、預かっている消費税1,000円のうち400円は仕入れ税額控除が可能です。
そのため1,000円から400円が控除されて、600円(図②)を税務署へ納めます。
(ここまでは、インボイススタート以前と同じになりますね)
課税事業者を選択しインボイス登録をした美容師の場合
業務委託で働く美容師さんは、4,400円(図③)の報酬を受けとれます。
このうち400円は消費税分です。
美容師さんは、この消費税分400円(図➃)を税務署へ納税します。
免税事業者のときにはこの400円を払う必要はありませんでした。
そのためインボイス登録後は収入が減るような気もしますが、簡易課税制度により、この消費税額は圧縮が可能となります。
美容師の場合は、第5種事業にあたり50%は圧縮が可能です。
400円の消費税のうち200円を税務署へ納めればいいので、結果的に美容師さんの収入は4,200円となります。
インボイス制度の目的は国税庁が消費税のしくみを改善するため
インボイスの目的は、国税庁が消費税のしくみを改善することです。
インボイスがスタートするにあたり、業務委託サロンの経営者とそこで働く美容師さんは、決断が必要になります。
最終判断は個人個人に委ねられていますので、自分で決めなくてはなりません。
業務委託で働く美容師の報酬は大きく変わる?
今回の例は、ひとりのお客様の支払い分の流れをわかりやすく紹介しています。
しかしこれを、業務委託で働く美容師さんの月単位や年間の報酬で見てみましょう。
たとえば、月に100万円の売上がある美容師さんの場合、月の報酬にすると、44万か40万円かの差がでてくるのです。
1カ月に4万円報酬が下がることで、年間で見れば48万円の報酬が下がることになってしまいます。
仕事を他の業務委託美容師にとって代わられる可能性もある
年間で48万円の報酬が下がることは、業務委託で働く美容師さんにとっては痛手ですよね。
それだけならまだいいのですが、経営者の立場からすると、仕入れ税額控除ができない美容師さんよりもできる美容師さんを選びたいと思っても不思議ではありません。
そうなると、今後はインボイス登録をしている美容師さんとしか契約をしない可能性もじゅうぶんに考えられるのです。
そのため業務委託で働く美容師さんがインボイス登録をしないことで、報酬が減るだけではなく、今後は今までのサロンで働けなくなってしまう可能性も出てきます。
もちろん、サロンの経営者が「これまでどおりで大丈夫だよ!」といってくれるかもしれません。
そのあたりは、サロン経営者と働く美容師さんとの関係性にもよるでしょう。
今後も免税事業者としてやっていきたいと思っている場合には、一度、経営者に確認してみることをおすすめします。
関連記事:インボイス制度は美容師にどう影響する?働き方別の対処法をご紹介
インボイス申請は2023年9月30日まで延長決定|つねに情報収集を!
当初2023年3月末までの登録が必要だったインボイスの申請ですが、実質半年間の延長が決まりました。
このようにインボイス制度についても、まだまだ流動的な状態であると言わざるを得ません。そのためつねにアンテナを張っておくことが必要です。
近年、業務委託契約で働く美容師さんはたくさんいて、より自由な働き方ができるために人気がありますよね。
また業務委託サロンも増えています。
サロン経営者は、インボイス後にどのような美容師さんに働いてもらうのか。
また美容師さんは、インボイス登録事業者になるのかならないのか、それぞれが考えていく必要があります。
そんなときに「自分ならどうすればいいのか?」の情報が知りたいものです。
もちろん最終的な判断はご自身がおこなわなければなりませんが、できるだけ正しい情報に触れていたいものですよね。
スタイルデザイナーでは、いち早く正確な情報をお届けしています。
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