独立開業コラム
- 2022.12.12 インボイス制度は美容師にどう影響する?働き方別の対処法をご紹介
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2023年10月からインボイス制度がスタートするといって、世間がざわついています。
インボイス制度とは、「インボイス(適格請求書)」を用いて仕入れ税額控除を受けるための制度です。
しかしその対応が個人や企業の判断にまかされているようなところがあり、「いったい自分はどうしたらいいのかわからない」といった声もよく聞かれます。
それぞれの立場によって対処法がわかれるところが、悩みどころですね。
美容師さんも、働き方によって対処法が違ってきます。
もちろん、最終判断は自分がしなければなりません。
この記事では、インボイス制度が美容師にとってどのように影響するのかを紹介します。
ご自身がどのケースにあてはまるのか、参考にしてください。
インボイス制度は美容師にどう影響があるの?
世間をざわつかせているインボイス制度ですが、美容師にはどのような影響があるのでしょうか。
影響の仕方や対処の方法は、美容師それぞれの働き方によって違ってきます。
そもそもインボイス制度とは
そもそもインボイス制度がよくわからない、という美容師の方も多いのではないでしょうか。
このインボイス制度は、たしかにわかりにくいことがたくさんあります。
また個人個人に対応が委ねられているところも悩ましい問題です。
インボイス制度によって、2023年10月から消費税のしくみが変わります。
具体的には、今までとは違う国が認めた「適格請求書」の発行や保存が必要になったり、事業者の消費税を納める金額が変わったりするのです。
インボイス制度のくわしい説明は、こちら↓にまとめてありますので、あわせてお読みください。
関連記事:インボイス制度をわかりやすくご紹介|2023年導入の目的や基礎知識
同じ美容師でも働き方によって対処法がことなる
このインボイス制度、何がそんなにわかりにくいのかというと、対処方法がそれぞれでことなるからです。
たとえば同じ美容師といっても、さまざまな働き方がありますよね。
その働き方によって、インボイス制度への対応方法が違ってきます。
- ✅ 美容室を経営しているサロンのオーナー
- ✅ 美容室と雇用契約を交わしている美容師(正社員、パート、アルバイト)
- ✅ フリーランスの美容師(面貸しや業務委託サロンで働いている)
- ✅ 1人美容室をやっている美容師
それぞれ説明していきましょう。
美容師の働き方別|インボイス制度への対処法
インボイス制度への対応は、働き方によって変わってきます。
ここからは、美容師がそれぞれの働き方によって、インボイス制度へどのように対応すればいいのかを紹介します。
ただし基本的には、すべて各企業や個々人の判断にまかされるものです。
あくまでも参考にしていただき、最終的にはご自身で判断をしてください。
美容室を経営しているサロンのオーナー
美容室を経営しているサロンオーナーは、年間の売上げが1,000万円以上か1,000万円以下かによって対応がわかれます。
年間売上げが1,000万円以上のオーナーの場合
年間の売上げが1,000万円以上ある課税事業者の美容室オーナーの場合は、基本的にはインボイス制度へ登録して登録事業者となるのがおすすめです。
お客様が一般消費者しかおらず、とくに適格請求書を発行する必要がなければ、インボイス登録事業者とならないという選択肢もあります。
なお2023年10月からインボイス制度に対応する適格請求書を発行できる「登録事業者」となるためには、2023年3月末日までに、登録事業者となる届け出を所轄の税務署へ出し手続きをおこなう必要があります。
年間売上げが1,000万円以下の美容室オーナーの場合
年間の売上げが1,000万円以下の美容室オーナーの場合には、対応方法が個人の判断にわかれます。
- ✅ 年間売上げが1,000万円以下でも課税事業者となりインボイス登録事業者となる
- ✅ これまでどおり免税事業者としてインボイス登録事業者にならない
それぞれ説明していきましょう。
課税事業者としてインボイスの登録事業者となる
年間の売上げが1,000万円以下の美容室オーナーは、これまで免税事業者であった場合が多いでしょう。
そのため消費税の納税が免除されていたはずです。
しかしインボイス制度に対応するために登録事業者となる場合には、今後は課税事業者となり、消費税を納めていくことになります。
こちらは、今まで消費税を納める必要がなかったのに、自ら課税事業者になる事になるので、現実的にはデメリットが大きい選択です。
免税事業者のままインボイスの登録事業者にもならない
年間売上げが1,000万円以下の美容室オーナーは、これまで免税事業者として、消費税の納税が免除されていました。
2023年10月以降も、免税事業者のままで、インボイスの登録事業者にならないといった選択です。
業務委託サロンの経営者の場合
自分が経営者で、業務委託契約をして美容師に働いてもらっている場合、その美容師が免税事業者だと、支払った報酬の仕入れ税額控除ができません。
つまり業務委託サロンの経営者側が、免税事業者である美容師の分の消費税分を納税する必要が出てきてしまうのです。
そのため免税事業者の美容師に2023年10月以降も働いてもらうと、消費税の納税額が増えてしまいます。
続けて働いてもらう免税事業者の美容師には、課税事業者になってもらうことが考えられるでしょう。
もしくは、免税事業者の美容師とは契約をやめて、課税事業者の美容師と契約をすることも考えられます。
美容室と雇用契約を交わしている美容師(正社員、パート、アルバイト)
次に、美容室と雇用契約を交わしている美容師側の場合です。つまり、正社員やパートなどで働いている美容師側のケースです。
この場合には、インボイス制度への登録はとくに必要ないと考えていいでしょう。
なぜならば、会社員として美容室から給料をもらっているため、そもそも適格請求書を発行するシーンがありません。
そして、今までと同じ収入も得られます。
ただし副業をおこなっている場合などには、インボイスへの対応が必要となるケースもありますので注意が必要です。
フリーランスの美容師【面貸しや業務委託サロンで働いている】
一番悩みどころとなるのが、フリーランスの美容師です。
面貸しサロンや業務委託サロンで、働いている美容師ですね。
業務委託契約は「給料」ではなく「委託報酬」を委託元から支払われています、この「委託報酬」には消費税が上乗せされて支払われています。
一概にはいえませんが、おそらく年間売上げが1,000万円以下の免税事業者である方が多いでしょう。
そのためこれまでは、消費税の納税が免除されてきたはずです。
しかし2023年10月にインボイス制度がスタートすると、これまでどおりに働けなくなる可能性があります。
考えられるケースとしては、「インボイス登録事業者となって適格請求書を発行してくれないと、今後はうちで働けません」と契約先の美容室からいわれることです。
そうなると年間の売上げが1,000万円以下であっても、課税事業者として登録をおこない、今後も仕事を受ける選択肢があります。
税務署へ登録申請を出し、適格請求書発行事業者として登録番号が記載された適格請求書を発行する手続きをとりましょう。
課税事業者になれば、消費税の納税義務が発生しますので、これまでは免除されていた消費税を2023年10月からは納めることになります。
つまり、収入としてはこれまでよりも減る可能性があるわけです。
いっぽう、2023年10月以降も免税事業者でいく選択をした場合には、最悪の場合には仕事が受けられなくなることも考えられます。
このあたりは迷いどころですが、仕事自体がなくなってしまうことは最大のリスクですので、しっかりと自分の身の振り方を考えましょう。
年間売上が1000万円以上あるフリーランス美容師で、課税事業者の場合は、インボイス登録事業者になれば、これまでと変わらないでしょう。
インボイス制度は1人美容室には関係ない?
人を雇わずに1人で美容室を経営している、1人美容室のケースです。
前述と同様に年間1,000万以上の売上があればそもそも課税事業者となるため、インボイス登録はしておいたほうがよいでしょう。
そして年間1,000万以下の売上が少ない免税事業者であれば、お客様に施術代の領収証などを求められて発行した場合にお客様は制術代の消費税控除ができなくなります。
しかしお客様のほとんどが個人であれば、免税事業者のままでもご商売への影響が少ないと考えられるでしょう。
美容師にとってインボイス制度の疑問
美容師にとってそれぞれの働き方に応じた対処法を紹介しました。
最後に、インボイス制度の疑問点についていくつか回答していきます。
個人事業主で年間売上1,000万以下だからインボイス制度に登録しない判断はどうなの?
前述のとおり、個人事業主として働いており、年間売上げが1,000万円以下だからという理由だけで登録しない、と安易に判断するには注意が必要です。
これまでどおりの仕事がもらえなくなる可能性もあることを、頭に入れておきましょう。
取引先の方針や自分の今後について、しっかりと見極める必要があります。
インボイス制度は免税事業者のままいける抜け道はあるの?
フリーランスの美容師が、2023年10月以降も免税事業者でいけるというのは、もちろん可能です。
よほど委託先の経営者と信頼関係がある場合などは、「このまま免税事業者でもいいよ。」といってもらえるかもしれません。いっぽうで取引要件を変更させられる可能性もあります。
このあたりは、経営者や取引先との関係性によるものといえるでしょう。
またインボイス制度には経過措置が設けられているため、その間じっくりと考えることも可能です。
個人事業主で開業して間もない免税事業者はそのまま免税の恩恵を受ける事が可能です。
インボイス制度に対応するには何をいつまでにやればいいの?
インボイス制度に対応し、2023年10月に適格請求書を発行できる登録事業者になるためには、2023年3月31日までに税務署へ届け出を出す必要があります。
期限までに届け出をしないと、2023年10月からは登録事業者として活動ができません。
この場合には、また翌年になれば登録が可能となります。
インボイス制度には経過措置がある
インボイス制度は2023年10月からスタートすることは決まっていますが、じつはその後経過措置がとられることになっています。
- ✅ 2023年10月1日~2026年9月30日:控除割合80%
- ✅ 2026年10月1日~2029年9月30日:控除割合50%
そして、2029年10月1日からは控除割合が0%となります。
こうして段階的に控除率が変動するしくみです。
スタイルデザイナーなら相談できる体制が整っていて安心
同じ美容師でもこのように、インボイス制度への対応方法がさまざまわかれています。
個人事業主として美容師をやっている方は、「いったい自分はどうすればいいのか?」と思いつつ、どこへ相談すればいいのかわからないのも現実でしょう。
もちろん、ネットで検索するなど自分で調べることも必要です。
しかしどの情報が正しいのか、そして自分にあてはまるのかを調べていても時間ばかりがかかってしまいます。
スタイルデザイナーでは、美容室オーナーに役立つ正確な情報を迅速に提供することを心がけています。
日々の業務に忙しいなか、個人では入手しにくい有益な情報を手軽に入手できることも心強いポイントです。
さらにスタイルデザイナーでは、美容室オーナーに向けた経営勉強会を定期的に開催しています。最新のたしかな情報を、いち早くお届けしているので安心です。
美容室開業をお考えなら、ぜひ一度スタイルデザイナーへご相談ください。